東アジアを戦争の危機が覆っている。現在の朝鮮半島危機は、94年に朝鮮民主主義人民共和国(以下、「共和国」)の核開発を阻止するため、米国が侵略準備をギリギリまで押し進めた時以来の危機である。
今回のミサイル騒動であるが、その出発点を確認しておく必要がある。
危機の発端は、昨年12月の共和国による人工衛星打ち上げである。国連安保理はこれを「長距離ミサイル」と断定し、今年1月、経済制裁を採決した。この決議に反発し、共和国は2月に核実験を実施。この核実験に対抗する形で、安保理は追加の経済制裁を決定。
さらに米軍と韓国軍は、3月から4月にかけて、「フォール・イーグル」と「キー・リゾルブ」という2つの共同軍事演習を実施。どちらも朝鮮半島有事がシナリオで、30万人以上の兵士が参加する巨大演習だ。かつて行われていた核演習である「チーム・スピリット」に代わる演習である。韓国内野党の調査によれば、同演習には防衛だけでなく共和国への上陸シナリオも含まれている。
米軍は、F22ステルス戦闘機に加え、原子力潜水艦、複数のイージス艦、そして朝鮮半島では初めて最新鋭のB2ステルス爆撃機を投入した。B52爆撃機の投入と合わせて、明白に核戦争を想定した兵器を投入して共和国を挑発した。さらに米軍は、沖縄のオスプレイを演習に投入。在日米軍もフルに巻き込む姿勢であることを強調した。
韓米演習が始まるのに合わせて、共和国政府は、「朝鮮戦争休戦協定の白紙撤回」を一方的に宣言。南北軍事ホットラインを遮断し、4月に入ってからは交流事業である開城工業団地も封鎖。核施設の再稼働も表明した。さらに、中距離新型ミサイルの発射や、大陸間弾道ミサイルの発射も示唆。もし米韓が北への攻撃を開始すれば、米国へ核攻撃を行うことも仄めかす宣伝を行っている。共和国の核実験や、朝鮮戦争の休戦協定の破棄などは、長年継続されてきた南北交渉の成果を台無しにする許しがたい行為である。
一方、共和国からすれば、現在の韓米演習は、核兵器運搬用の爆撃機を目と鼻の先で飛ばされている状態である。共和国がミサイル発射を示唆することも、前線スレスレの地域で韓米が軍事演習を行うことも、共に止めるべきだ。
日本政府は安倍首相が「北の挑発は許しがたいレベル」と断じ、PAC3ミサイルを首都圏や沖縄に展開して、迎撃態勢を強化する対応策をとっている。くわえて自民党の石破幹事長は、「もし自衛隊の艦船がミサイルの標的にされたら、即時防衛出動を命令すべき」と明言した。この態勢が米韓との共同作戦の一翼であることは明白であり、政府もそれを隠そうともしない。
軍事的緊張のエスカレーションは非常に危険な状況である。「日米同盟」の下に思考停止し、敵対関係を固定させるのではなく、日本は緊張緩和の道を探るべきだ。01年の平壌宣言に立ちかえり、国交交渉を再開することも一つの方法である。
先日立川基地を訪れた時、当直司令の自衛官は、「NK(ノースコリア)シフトでずっと待機状態」と緊張感を口にした。臨戦態勢が兵士の敵意を増幅させる効果もあるだろう。何としても戦争回避の道を探らなければならない。