2月12日、北朝鮮は3回目となる地下核実験を強行した。朝鮮中央通信は「合法的で平和的な衛星打ち上げの権利を乱暴に侵害した米国の極悪非道な敵対行為に対処し、国の安全と自主権を守るための実際的対応措置の一環として実施」したと発表した。
核実験を予告した1月24日には「引き続き打ち上げる衛星と長距離ロケットも、高い水準の核実験も、敵である米国を狙うものだ」との軍事目的であることを示唆する国防委員会声明を発表していた。
実験を受け、日本政府はすぐに制裁措置を発動し、朝鮮総連幹部の渡航禁止を拡大する措置を打ち出した。また、一部の自治体では、朝鮮学校への補助金を停止する動きなどが広がっている。川崎市は、今年度分の補助金のうち未執行の計約300万円で、拉致被害者家族の著書などを購入し、現物支給することを明らかにした。
北朝鮮政府による核実験の強行は断じて許されるものではない。飢餓や貧困にあえぐ民衆の生活を犠牲にして、核兵器や軍事が優先される北朝鮮の先軍政治や独裁体制は、徹底的に批判されるべきだ。
しかし核実験を理由に、朝鮮学校への補助金を停止することは、差別以外の何物でもない。ましてや、拉致事件と何ら関係のない子どもたちに拉致家族の本を支給するなど、差別を助長する行為でしかない。
日朝国交正常化、北東アジアの非核化を図り、相互交流や、信頼関係を築いていくことでしか、核問題や拉致事件の最終的な解決はない。対立や差別を煽り助長することからは何も生まれないことを、この間の歴史からまなぶべきである。
一方、安倍は、2月22日訪米し、オバマ大統領との日米首脳会談を行った。北朝鮮に対しては、日米で協力して国連安保理で追加制裁決議の採択を目指すことで合意したほか、実効性が高い金融制裁に関しても協議したという。
さらに、安倍は「日米同盟の信頼、そして強い絆は、完全に復活をしたと自信を持って宣言したい」と述べ、日米安保の強化を米国に約束した。
具体的には、集団的自衛権の行使容認に向けた検討、普天間基地の県内移設の早期進展、日本の防衛費増額や防衛大綱の見直し、「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)の再改定、米軍の早期警戒レーダー(Xバンドレーダー)の日本追加配備、ミサイル防衛(MD)協力の推進、宇宙・サイバー分野での日米協力などで、枚挙に暇がないほどだ。
その他にも、エネルギー分野で、民主党政権が掲げた「2030年代に原発稼働ゼロ」の方針を見直すと表明。経済でも、「一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではない」という言質をとったということで「聖域なき関税撤廃」ではなくなったとして、TPPへの交渉参加を近く表明する予定という。
これだけの手土産を米国に持って行って、その見返りが関税撤廃の例外の言質一つであり、それすらも一方で「すべての物品が交渉の対象となる」というのだから怪しいものだ。
また、尖閣問題では日中の過度の対立を懸念する米国に配慮して「冷静に対処していく」と説明せざるを得なかったという。国内では、レーダー照射問題などで対立世論を煽っておきながら、尖閣問題に何の利益も見出せない米国の前では、逆に冷静さを装うことしかできなかったのだ。
安倍としては米国を引き込み、中国をけん制することを目論んだのだろうが、高みの見物がこの問題での米国の一貫した姿勢だ。日中の適度な対立状態を望む米国にとって、自らのリーダーシップの下での対中国包囲網の構築には興味はあっても、突発的な軍事衝突を招きかねない尖閣での過度の日中対立には首を突っ込みたくないのだ。
私たちが注視しなければならないのは、安倍による米国との約束が、今後、どのように実行されていくかだ。軍事国家・日本へと「日本が戻る」(ジャパン・イズ・バック)ことのないように、さらなる日米安保、自衛隊強化に反対しよう!