テント村通信アーカイブ



無理が通れば道理がひっこむ
オスプレイはアメリカに帰れ!(2012年10月号掲載)




 沖縄普天間基地にオスプレイが着陸する。ゲート前に集まり、基地封鎖を闘う住民の映像がインターネットで送られてくる。40年前、空からヘリコプター部隊の自衛隊立川基地進駐が強行されたことを思い出す。悔しく無念だった。自衛隊の沖縄移駐はその数ヶ月前。立川でも米軍基地正門を突破する沖縄配備反対デモがあり、数名の逮捕者が出た。沖縄と立川はつながっていた。


「不沈空母」はいま、「対テロ戦争」の訓練場


 オスプレイは対テロ戦争で戦場に兵員・物資を急襲運搬する。試験飛行段階でも乗員死亡事故が相次いだ欠陥機だ。しかし米軍は「事故原因はパイロットの操縦ミス。機体に欠陥はない」と強弁してきた。米本土やハワイで住民に拒否された米軍は、「日本なら無理が通る」と沖縄普天間への「配備」、全土で「飛行訓練」の強行突破をもくろんだ。かつて「不沈空母」と呼ばれた日本列島は、更に加えて「対テロ戦争の訓練場」になる。

 横田基地には台風が来ると沖縄から米軍機が避難してくる。周辺5市1町の連絡協議会がいち早く「配備反対」の申し入れをし、立川市議会も反対意見書を9月議会で採択した。傍聴に行って、市当局が「住民の安全を守るのが自治体第1の任務」「防衛や外交については自治体は発言できない」のせめぎあいに悩んでいるのがわかった。日本政府は「事前協議の対象外」と文句1つ言わなかった。


パイロットの命なんて意に介さない米軍


 パイロットは、要請に時間も金もかかるいわば「子飼い」の要員だ。部下の命を粗末にする軍隊ってなんだろう?と反軍放送でも問いかける。オスプレイは自衛隊に配備されている大型ヘリCH47などの老朽化にともなう後継機として開発されたものだ。立川基地飛来も、将来の自衛隊配備もありうる。

 アメリカは戦争をしないとやっていけない国になってしまった。その軍隊はいま、部下の命をなんとも思わない。格差社会、不法移民の社会で、兵員はいくらでも調達できる、戦争請け負い業者だってある。対テロ戦争の本質が、そこに凝縮されている。こんな軍隊にも、彼らが起こす戦争にも加担したくない。私たちは沖縄普天間基地前に座りこむ人々と、思いを共有したい。

 「同盟」の片割れ日本政府はアメリカにとても似てきた。人々の声は無残に踏みにじられ、規制委員会人事も、再稼働も、中断していた原発建設も、そしてオスプレイ配備と飛行も、すべて強行突破だ。その背景にはアメリカのテコ入れがあったという。日米安保ゆえにオスプレイを受け入れ、原発を継続する必要があるというなら、安保そのものをやめよう、という認識が深まりつつある。


日中国交正常化40年 ―侵略の歴史に向き合おう


 中国脅威論や「尖閣諸島」問題で排外主義をあおれば、オスプレイ反対世論は沈静化するだろうという思惑ははずれた。福島の自然と人々の生活を奪い、事故収束や未来にわたる責任に向き合わない為政者に、美しい南の島の領有を云々する資格はない。大気中に放出された放射能は国境を越えて飛んでいく。汚染された海水は領海を越えていく。

 NHKの日曜討論を聞いていたら、「尖閣問題で台湾と中国の立場は異なる。その間隙を狙おう」「従軍慰安婦問題では村山・河野談話レベルまで後退しよう」などと床屋談義。権力とそれに連なる者たちの右往左往ぶりは聞き苦しく見苦しい。「日本漂流」の文字が脳裏をかすめた。

 日本の未来も、東アジアの平和も、強国志向・歴史の忘却からは生まれない。戦前石橋湛山が唱えたという「小日本主義」。時代は変わるが、勇気をもって考えてみたい。



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