国内にある原子力発電所54基のうち、運転中なのは東京電力柏崎刈羽原発6号機と北海道電力の泊3号機だけになった(2月末現在)。そのうち柏崎刈羽6号機は3月26日に定期検査入りすることが決まっている。泊3号機も本来4月28日頃に定期検査入りする予定だったが、「泊1、2号機の再稼働のめどが立たず、今春の電力需給が不安視される」という理由で、定期検査の5月先延ばしの検討が始められた。
こうした場当たり的原発推進を許さず、全原発の停止と廃炉を目指そう。
? 電気事業法の規定で、原発の定期検査は営業運転開始後 13カ月以内に実施することになっている。これすら元々は1年おき(つまり12ヶ月に1回)だったものをコスト削減のために法を変えて延長しているのだ。しかも最初の頃は70日以上かけていた検査は、 現在40日に短縮されている。他の火力発電などに比べ効率がいいと言われていた原発は、元々は年の3ヶ月近くも動かせない代物だった。検査の延長も検査期間短縮も、すべてコストダウンのためである。だが、そのことが複雑な原発のシステムにしばしば事故を起こす要因になっていることは明らかだ。
今年2月25日には、柏崎刈羽原子力発電所5号機で、熱交換器建屋の中の装置から白い煙が出ていることがわかった。また日本原電の東海、東海第2と敦賀原発では2011年度建屋や凍結防止用ケーブルなどで、5回もの火災が発生して厳重注意を受けている。福島の事故以降なのでよほど作業員は緊張して日々の仕事を行っていたはずだ。にもかかわらずこうした事故を防ぎ得ていないということが、原発の日常的な危険性を物語っていると言えるのではないか。
今年1月からは、事故を起こした福島第一の2号機の温度計故障がニュースになっていた。容器内温度の急上昇は温度計故障ということで片付けられたが、東京電力が2号機の格納容器内にある41個の温度計のうち15個について調査したところ、さらに2個が故障していることがわかったという。
温度計は火力発電所でも設置されているが、火力発電と違い故障しても格納容器内の放射線は高くて交換することができない。だから複数設置しているのだろうが、現在格納容器内は高温多湿でこうした機器へのダメージは大きい。もはや原子炉内の正確な状況は、誰にもつかめないというのが現実だろう。
福島の事故が起きたことで多くの人々が原子力発電に否定的な意見を持つようになった。だが、事故が起きなければ問題はなかったというわけではない。日々生み出される被曝労働と労働者使い捨て問題。使用済み燃料など大量の核廃棄物の処理方法は未だに確立されず、地下深くに何万年も封印する以外に方法がない。プルトニウム239の半減期は2万4千年もある。そんな長期間の運用に耐える建築物を生み出すなど不可能だ。出たゴミの処理方法もわからないまま始められたのが原発なのだ。
現在、全国の仲間がすべての原発を廃炉にすべくさまざまな反対運動を3月に向けて展開している。デモも地域ごとのネットワークを作りだし、地に足のついたスタイルの運動が定着してきた。
だが、議論すべき課題は多い。右翼や保守派にも脱原発派はいるし、デモもやっている。だが、脱原発だからといって環境エネルギー政策研究所長の飯田哲也のように、大阪・橋下市長などと手を結ぶことなどできるはずもない。市職員組合などの労働運動への敵対的な姿勢、日の丸君が代問題での締め付けを見れば、橋下の反動性は明らかだ。
そもそも原子力発電が、核兵器や巨大資本と密接な関係をもって生まれてきたことは、通信3面の連載でも指摘してきた。単にクリーンで安全ななエネルギーを、というスローガンだけでは脱原発闘争は闘えない。資本主義社会のシステムへの根底的な批判、反軍反基地や反天皇制闘争とも結びついた多角的な運動が、そこで問われている。
3月11日郡山集会、同日の東京での国会包囲行動、3月17日たまウォークイン国立など諸行動に積極的に参加しよう。