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尖閣諸島問題を利用した国家主義、排外主義に反対する!(2010年11月号掲載)



 尖閣諸島の領有権をめぐって日本と中国の関係が極度に悪化している。現在では両国内で相手への抗議デモが行われ、それを一部マスコミがセンセーショナルに取り上げ、さらにデモが広がるという悪循環に陥っている。日本では、田母神や在特会らが呼びかけた、中国大使館への「大規模な」デモが行われたというが、規模の真偽はともかく、国家主義、排外主義が、着実にこの問題を機に膨れ上がったことは事実だ。

 いま私たちに求められていることは、政府や国家の枠組みにとらわれずに、民衆としてこの事態に冷静に向き合うことである。そして、日本と中国の民衆どうしが、国家の思惑に利用されずに、今後どう連帯できるかを模索することだろう。

 センセーショナルな報道の一方で、両国の市民の大半は冷めた目で一部の過激な行動を見ている、という報道もある。いまこそ街に出て、国家主義と排外主義に反対!と、直接、市民に訴えていくことが必要だ。


尖閣問題を機に噴出する自衛隊強化


   そして、まず私たちが取り組まねばならないのは、こうした国家主義、排外主義を利用した、国家による自衛隊強化の動きに反対することである。テント村は9月30日、声明を発表し、この問題をテコにした自衛隊強化に抗議した。しかし、自衛隊強化の動きがますます強まっている。

 9月19日、防衛省が陸自の定員を16万8千人へ1万3千人増やす方向で調整していると報道された。新たな「防衛計画の大綱」に盛り込み、沖縄本島の現在の陸自部隊は約2千人だが、これを2020年までに南西諸島を含めて10倍の2万人規模にする構想も浮上しているという。同21日には、北沢防衛相が数字には触れなかったが「先島諸島に何らかの形で部隊配備したい。その調査を(次年度から)スタートさせたい」と述べ、配備の意向を一層強く示した(琉球新報)。

 さらに、同27日には、長島昭久前防衛政務官ら民主党議員43人が首相宛に、日米両軍による南西諸島の防衛態勢強化や、尖閣諸島周辺での日米軍事演習実施を要請する「建白書」を提出した。これとは別に、松原仁衆院議員ら12人も、尖閣諸島への自衛隊常駐の検討を政府に求める声明を同日、発表した。

 こういった声を受けてか、10月3日、日米防衛当局が、11月のオバマ大統領の来日直後から、米海軍と海自を中心に空母ジョージ・ワシントンも参加しての大規模な統合演習を実施することが明らかになったという(産経新聞)。作戦の柱は「尖閣奪還作戦」で、強固な日米同盟を印象付け、東シナ海での活動を活発化させる中国軍を牽制する狙いがあるのだという。

 10月6日には、防衛省は三沢基地に配備されているE2C早期警戒機を、定期的に那覇基地に展開させ、一定期間運用する検討を本格的に開始(朝日新聞)。また10月21日には、海自が保有する潜水艦について、現行の16隻から20隻以上の体制とする方向で検討に入ったとも報道されている(時事通信)。

 一方で、中国バッシングデモを呼びかけた田母神は、自衛隊OBらと、かねてからの持論である核武装とともに、原子力空母、原子力潜水艦、戦略爆撃機、巡航ミサイルを20年かけて新たに開発・配備するのに、年1兆5500億円の防衛費の増額で足りるとする試算を発表してもいる。
 最後の例などは、バカげた話でしかないが、いまの趨勢の中では一部ぐらいなら実現してもおかしくない状況だ。このように国家主義と排外主義の高揚は、かならず軍拡と戦争体制強化をもたらす。尖閣諸島問題を利用した国家主義、排外主義に断固反対しよう!


ついに在特会も登場した朝霞観閲式


 10月24日には、自衛隊の朝霞中央観閲式が行われた。この場でも菅首相は中国海軍への警戒を強化と訓示した。当日は、朝霞側、練馬側双方から抗議デモが行われ、70名、130名が参加し、中止を訴えた。横浜APECの予行演習なのか、町中警官と私服でいっぱいだった。それとともに、基地の北側では、ついに在特会による自衛隊応援のデモが行われたという。規模は不明だが、これまで排外主義が中心だった在特会が、尖閣問題を機に、とうとう軍隊の応援に乗り出した意味は小さくない。

 政府批判とともに、町に出て、国家主義、排外主義、それと連動した軍拡、戦争体制強化に、抗議の声を上げていこう!



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