どのTVチャンネルもオリンピックで明け暮れる昨今だ。浅田真央の悔し涙には同情するが、彼女が背負わされた日の丸―日本国の威信という重圧を誰も不思議に思わない。オリンピックはつくづく広島・長崎にそぐわないと思う。
モンゴル出身の横綱朝青龍が引退させられたニュースなど、もう賞味期限切れだ。白鳳が泣いて悔しがっていたあのとき、何場所か前の両者ゆずらぬ、見事だった優勝決定戦を思い出した。日本国の我々は、格闘士の死闘を観戦―消費するローマ市民と異ならない。そうして守られる「日本国の威信」のなんと薄っぺらなことか。
子ども手当の創設、高校学費無償化など、自民党政権時代よりましな政策が実現するかと思われた矢先、「朝鮮高校の学費無償化はするな」という排外主義世論が起こり、鳩山首相は「そのように調整します」と答えた。ときあたかも開かれていた国連人権委員会は、「差別があってはならない」とこの動きをチェックした。
日本は現実に多民族国家である。それぞれの民族としての教育が行われていて何の不思議も問題もない。まして朝鮮高校の教育課程は、大学入試でも日本の高校教育同等のものとして受け入れられている経緯がある。朝鮮高校の生徒たちの教育を受ける権利は、差別されることなく平等に保証されるべきなのである。
新政権で打開策が見いだせるか、と期待された「拉致問題」への対処も、今のところ自民党の無策を継承しているだけに見える。「拉致問題」は、北朝鮮敵視、排外主義拡大のため、さらに在日米軍基地の拡大強化の論拠として最大限に利用され続けている。
ハイチ大地震を利用したどさくさ紛れの自衛隊PKO派遣も批判されるべきである。隣国のキューバは、地震発生直後から医療班を中心に大規模な救援活動に入っている。キューバが蓄積してきたこの分野での経験には、学ぶべきことが多い。「国際貢献とは軍隊を派遣すること」で収斂されようとしている日本の現状を「地震だから仕方ない」と看過するのは、運動側の怠慢というべきだろう。
「政治と金」で混迷が続く国会をよそに、立川では恒例の憲法集会の準備が始まった。今年のテーマは「やめよう日米安保 なくそう米軍基地」。メインの講師に沖縄から高里鈴代さんを招く。高里さんは元那覇市議で、女性の立場から基地問題へのとりくみを続けてきた人である。また、立川にある三線教室の有志による三線演奏とおどりも予定されている。
5月3日の本集会に先立つ4月11日午後には、すわっ祭参加学習会が開かれる。テーマ「日韓併合百周年―過去に学び未来を築く」。講師には津田塾大教授の高崎宗司さんを招く。歴史から学び、東アジアの将来を見据えて考えをめぐらせる場にしたい。
憲法集会の財政と準備を支える賛同人集めが始まるが、沖縄からの交通・宿泊費を確保するため、例年より多くの賛同申し込みを呼びかけたい。これからの2ヶ月間、チラシ配りやポスター貼り、印刷や展示作業など、賛同人が力をあわせ、手づくりの憲法集会を成功させたいものだ。
この冬も、街でたびたび野宿者を見かけた。日銭を稼いでネットカフェで夜を過ごせた人は幸いだ、と思われる寒さの夜もあった。行政が空いているアパートを全て借りて開放すれば、少なくとも野宿はしなくても済むようになるだろう。住居の確保は基本的人権に属す事柄である。労働者派遣法の改正案も、ザル法に止まるという。膨大な流動労働者を抱える日本社会。その流れに落としこまれる恐怖を抱えて、「安全・安心」の呼び声が人びとの心をとらえる。
この春、警視庁はネットカフェ(まんが喫茶)規制条例案の都議会提出をもくろんでいる。利用者に身分証の提示を求め、店側には利用記録の3年間保存を義務づけるこの条例は、警察の職権濫用、人権侵害、そして新たなネットカフェ難民を生み出すだろう。3月13日には、規制反対の新宿繁華街デモが予定されている。注目と参加を!